日本の飲食企業がオーストラリア進出を考え始めると、最初に話題になりやすいのが立地です。 「シドニーならどのエリアがいいか」「空いている物件はあるか」。もちろん、飲食店にとって立地は大切です。

ただ、私はいきなり物件から入るのは少し危ないと思っています。

私自身、オーストラリアで生活し、現地の飲食企業で店舗の現場とバックオフィスの両方に関わりました。 店舗側にいると、売上やお客様の反応だけでなく、スタッフが何人必要なのか、仕込みにどれだけ時間がかかるのか、 ピーク時にどこが詰まるのかが見えます。一方で経理側に回ると、その一つひとつが人件費や原価として数字に表れます。

そこで強く感じたのは、日本でうまくいっている店を「そのまま持ってくる」だけでは、海外1号店の設計にはならないということでした。

良い物件を見つけてから事業計画を作るのではなく、
成立する事業を考えてから、その事業に合う物件を探す。

日本で成功している店を、そのまま持っていけばいいわけではない

日本で繁盛している業態なら、同じ店をシドニーに持っていけば勝てる。そう考えたくなるのは自然です。 ブランド、商品、接客、オペレーション。すでに国内で磨かれているものがあるからです。

ただし、オーストラリアでは事業を取り巻く前提が変わります。人件費、家賃、食材の仕入れ、採用環境、商習慣、 そしてお客様が受け入れる価格帯も日本と同じではありません。

例えば、日本ではスタッフを厚く配置することで成立している丁寧なサービスも、同じ人数をそのまま配置すると 人件費が利益を圧迫するかもしれません。逆に、日本では高く見える価格でも、シドニーでは立地や業態によって十分に成立することがあります。

だから考える順番は、「日本で1,000円だから豪州ではいくらにするか」ではありません。 現地でこの店を成立させるには、いくらで売り、何人で回し、どのくらいの家賃まで払えるのか。 こちらから逆算する必要があります。

物件を見る前に、まず簡単なP/Lを作る

私なら、物件情報を大量に集める前に、まず簡単な店舗P/Lを作ります。 立派な事業計画書は必要ありません。最初は仮置きで十分です。

  1. 想定する客単価
  2. 1日の客数と回転数
  3. 月間売上
  4. 食材原価
  5. 必要なスタッフ数と人件費
  6. 家賃・光熱費・その他の運営コスト

ざっくりでも数字を置いてみると、「この業態なら月にどのくらい売る必要があるか」「家賃はいくらまでなら耐えられるか」が見えてきます。 ここまで来て初めて、物件の条件が具体的になります。

逆に、先に魅力的な物件を見つけてしまうと、その場所に出したい気持ちが先に立ちます。 すると、いつの間にか「この家賃でも成立する計画」を作る方向に数字が引っ張られます。 海外1号店では、この順番の逆転をできるだけ避けたいところです。

A practical order for the first store
01 誰に何を売るか
02 売上・原価・人件費を置く
03 払える家賃を逆算する
04 エリアと物件を絞る
05 開業プロジェクトを動かす

「シドニーに出したい」だけでは、まだエリアを決められない

シドニーは一つの市場ではありません。CBDのオフィスワーカーを狙うのか、住宅地の日常需要を狙うのか、 観光客が多い場所なのか、アジア系の住民が多いエリアなのか。ショッピングセンターと路面店でも条件は大きく変わります。

同じラーメン店、焼肉店、カフェでも、誰に来てもらうかによって価格、営業時間、席数、店舗面積、メニューの構成は変わります。 「シドニーで良い物件」というものが単独で存在するわけではなく、その事業モデルにとって良い物件があるだけです。

飲食店の店内イメージ
Restaurant in an international city

海外進出では「出店」そのものが一つのプロジェクトになる

もう一つ、日本国内の出店と違うのは、最初の1店舗では社内に「いつもの人」がいないことです。

日本で何店舗も展開している会社なら、不動産会社、施工会社、採用媒体、会計事務所、仕入先など、すでに付き合いのある相手がいるはずです。 ところが初めてオーストラリアに出ると、その関係を一から作ることになります。

現地法人、銀行口座、物件、契約、設計・施工、ライセンス、採用、給与、会計・税務、仕入先、POS、保険。 一つひとつは専門家に頼めても、それだけで店舗が予定日に開くわけではありません。

誰かが全体を見ながら、「今どこまで進んでいるか」「次に何を決めるか」「誰にボールがあるか」を管理する必要があります。 Paragonが海外1号店の支援で重視しているのも、このプロジェクトマネジメントの部分です。

1号店は「完成形」ではなく、オーストラリアで勝てる形を作る場所

海外進出を考えると、つい最初から大きな絵を描きたくなります。「シドニーの次はメルボルン」「その後はオーストラリア全土へ」。 その構想自体は悪くありません。

ただ、1号店の役割はもっとシンプルに置いてもいいと思います。

まず1店舗を成立させる。現地のお客様が何に反応するのかを見る。現地スタッフでオペレーションを回す。 数字を確認し、修正し、再現できる形にする。そのモデルができてから2店舗目を考える。

日本の完成された店舗をコピーする場所ではなく、オーストラリアで勝てるモデルを作る場所。 そう捉えると、1号店で何を優先すべきかも変わってきます。

最初に整理したい5つのこと

これからオーストラリアへの飲食店進出を検討するなら、物件サイトを開く前に、まず次の5つを紙に書き出してみることをおすすめします。

  1. 誰をターゲットにするのか
  2. 客単価をいくらに設定するのか
  3. 現地のコストを踏まえて利益が出るのか
  4. そのモデルに合うエリアはどこなのか
  5. オープンまでのプロジェクトを誰が管理するのか

海外進出では、何をするかと同じくらい「どの順番でやるか」が結果を左右します。 物件探しを急ぐより、まず店の成立条件を決める。その方が、後からやり直すことはずっと少なくなります。

オーストラリア1号店について、構想段階からご相談いただけます。

Paragon Global Partnersでは、市場・事業モデルの整理から、現地専門家の組成、物件・法人・採用・施工・開業まで、 日本の飲食企業のオーストラリア進出をプロジェクトとして支援しています。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法務・税務・許認可等に関する助言を構成するものではありません。 実際の進出にあたっては、案件に応じてオーストラリア現地の各専門家と連携して対応します。